変形性股関節症
股関節に見られる変形性関節症を特に変形性股関節症とよびます。
進行すると日常生活では、足の爪切りがやりにくくなったり、靴下が履きにくくなったり、和式トイレ使用や正座が困難になります。また、階段や車・バスの乗り降りも手すりが必要になります。
変形性股関節症の患者数
国内におけるX線診断による変形性股関節症の患者数は120万~510万人と推定されます。女性の方がかかりやすい傾向にあります。
日本の場合、発育性寛骨臼形成不全といって股関節に負荷がかかりやすい骨形態が背景にあるものが約90%を占めています。発育性寛骨臼形成不全は、幼児期のおしめの巻き方が原因で起こることが以前問題となっていましたが、最近は巻き方の啓蒙活動により減少傾向にあります。
変形性股関節症の治療法
治療方法は大きく分けて保存療法と手術療法の2通りです。
一般的に日常生活に大きな支障をきたすほどの重度な機能障害や疼痛があり、保存療法では限界がある場合に手術療法の適応となります。
一方、症状が軽い場合でも病気の進行が予想される場合には早期に手術療法を行った方がいい場合もあります。
保存療法
主に薬物療法と運動療法があります。
- 運動療法
中殿筋など膝関節周囲の筋肉を鍛える治療法で、筋肉増強により関節への負担や衝撃を和らげることが目標です。筋力トレーニングにあたっては、痛みや関節への過負荷に配慮した方法が主に採用されます。 - 薬物療法
膝関節に起きた炎症を消炎鎮痛剤で抑える治療法です。 湿布や軟膏などの外用薬や内服薬が存在します。
手術療法
骨切り術、棚形成術(たなけいせいじゅつ)、人工股関節置換術など様々な術式があります。
また骨切り術自体も、目的(除痛なのか進行の予防)、変形の程度、患者の年齢など様々な因子によって使い分けられています。手術を受けるべきかどうか、いつ手術を受けるべきか、受けるならどの手術方法が最も適しているかなど、専門医と詳しく話し合う必要があります。
- 骨切り術 / 棚形成術
もともとの関節を残して手術する方法です。
主に寛骨臼形成不全患者の関節安定性を向上させることで、疼痛の緩和と病状進行の予防を得ることを目的とします。
骨切り術は、寛骨の一部を回転させる寛骨臼回転骨切り術、骨盤を水平に切って横にずらすキアリー骨盤骨切り術、大腿骨内反/外反骨切り術などがあります。
棚形成術は自分の骨盤の骨を移植して臼蓋の屋根の部分補填する手術です。 これらの手術は症状の程度によって、最適な方法を選択します。 - 人工股関節置換術
変形した関節を人工の関節に置き換える手術です。病状が進行した時期でも疼痛の改善に大きな効果があります。保存療法で十分な効果が得られなくなった場合に検討が必要になります。